私は集団塾の講師をしています。
心臓の図をノートに書かせたい。
ノートの中央に握りこぶし大の円を書かせたい。
みなさんならどうしますか。
そんなの子供に書かせるのがまず間違い!
事前に心臓の図を紙に書いて、配ってあげればじゃない!
…なーんて思ったそこのあなた!
塾は教材費をいただいている関係上、各講師が私的なプリントを配ることは基本禁止されているんです。
前の会社もそうだったし、今の会社もそう。
というわけで、ノートに書かせる方法を考えていただきたい、すみません、お願いします。
今までにトライした方法は3つ。
どれが一番うまくいくと思いますか?
1.「ノートの真ん中に握りこぶし大の丸を書いて!」と呼びかけ、黒板にノートの図を描き、だいたいこれくらいだと書いて示す
2.「上から5マス、横から5マス行ったところから、縦10マス横10マスの中に丸を書いて!」と呼びかけ、黒板にもマス目の指示を書く
3.子供たちが使っているノートのいちページをコピーして、書いて欲しい大きさの円を、書いて欲しい位置に書き、黒板に貼り付ける
さあ、10才児に一番効果的なのは何番か!?
私の勝手な統計によると、圧倒的に2番。
30人ちょっとのクラスで、9割以上の子が指示通り書けちゃう。
かかる時間も、最も少ない。
パッと見ものすごくややこしそうに見えるこの方法、子供たちはとても受け入れやすいよう。
では1番はどこが問題なのか。
子供たち、「真ん中に書いて」って言ってるのに真ん中に書いてくれないです…!!!※ノートの中央のこと
びっくりするぐらい「真ん中」が伝わらない。
黒板で図示しているのに。
半分弱の子が、思い思いの場所に、円を書く。
黒板で図示しているのにーーー!
「せんせー!!これであってるー!!?」って嬉しそうに、ノートの上の方に円を書いている。
「いや、真ん中だよ!」と言うと、頭の上にはハテナがポン、ポン、ポン。
上の方に後から書き足したいから、上に5マスくらい空けて、握りこぶし大の丸を書いてね!と言ったこともありましたが、これでも伝わらず。
おそらく、円を書くことで必死なんだろうなあ…
すまんよ、難しいことお願いして…
3番を試した時は、とても面白い結果になりました。
子供たちが使っているノートをそのままコピーして、書いて欲しいサイズの円を、書いて欲しい場所に書いて、こりゃー上手くいくぞ!なーんて思っていたら、
なにやらみんな、書くサイズがとても小さい!!!!!
8割くらいのこが、小さな円を書いている!!!!!!!!
机間巡視しつつ、え、なんでなんで!?とふと黒板を見たら…
黒板に貼り付けた円が、ここからだと小さく見える!!!
いや、そりゃ確かにそうなんだけど!!!!
縮尺無視かい!!!!!!
結構な衝撃でした。
そうか、子供たちの席から見たら、ただの小さな丸なのか。
遠近とか、縮尺とか、考えられないもんなんだ!!!!!
へえー!!!!新たな発見!!!!
磁石を外して、子供たちの席まで見本を持っていくと
「えっ!?大きい!!!あれ!?」の声。
純粋に、かわいいなーと思いました。
そしてごめんよ、とも。
そんなわけで、一番上手くいくのは2番。
書いて欲しい大きさを、マス目で伝える。
「いち、にー、さん、しー…」と声に出しながらマス目を数え、
「よし、ここ!」と決心した顔で円を書く。
そしてパッと顔を上げ、「できた!!!」の嬉しそうな表情。
塾の講師ってとても面白いです。
もう10年経つけど、毎年新しい発見がある。
これが究極の指導法だーーー!!!なんてものはなくて、毎年頭をひねって、より良いものを考えてトライする。
今のところは、このマス目数え戦法が最有力戦術です。
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