何かがおかしい。
私はそう思った。
もうかれこれ10年以上愛用している私の靴下に、異変が起こったのである。
私は無印の直角靴下が大好きで、中でもくるぶし丈を好んでよく履いていた。
そうそうへたれることがないし、はきやすく、色合いやデザインがベーシックで、とても私好みだった。
安売りされているときに替えのソックスを買い足しておくくらい、気に入っていた。
それがなんだか最近おかしいのだ。
脱げる。
とにかく脱げる。
歩くと、スニーカーの中でするりと脱げていく。
そうして土踏まず部分にくしゅくしゅっと固まってしまう。
これが、ボーダーソックスのみに起こる。
異変を感じ始めたのはおよそ1年前。
無印が価格改定をしたころだろうか?
ボーダーソックスだけ、ゴムの強さを変えたっていうのか?
そんな面倒なことをするメリットはなんだ?
もう無印でソックスを買うのはやめにしようか、と、少し怒りの気持ちも湧いてきていたある日。
洗濯物をたたみながら、私は気づいた。
1年前、それは夫が無印の靴下を買い始めたころじゃないか。
思い起こされる、記憶。
「無印の直角靴下いいよ!特にスニーカーソックスはシンプルで大人っぽくていいよ!」
そう、私は、夫にすすめたのだ。
そして、夫は、買った。
私の持っているボーダーソックスのサイズ違いを。
犯人はアイツだ!!!!!
いや、落ち着け。
決めつけはよくない。
昔塾で働いていたころ、夏期講習の初日に大きな勘違いをしたことがあっただろう。
自社ビル最上階の一番広い教室に、子供に紛れて読書をする姿勢のいい謎のおじいさん。
どう見ても不審者か、うっかり迷い込んだご老人にしか見えず、慌てて一階の教務室に報告に駆け込んだ。
すると笑いを堪えながら「あれは他地区から応援に来てくださった先生だ」と上司に告げられた。
他地区の教師だから、教務室に居場所がなく、仕方なく子供がいる教室に座って読書をしていたのだという。
何がどう仕方ないのかさっぱりわからないし、子供に全く話しかけないもんだから、
「このおじいちゃん誰かなって思ってた」なんて子供たちは言うし、
正直不審者にしか思えなかったけど、
決めつけをせずきちんと確認をしたから、すんでのところで失礼を働かずに済んだ。
その経験を忘れてはいけない。
私は、おそるおそる尋ねた。
「最近、私の靴下を間違えてはくことって、あった?」
「あったあった!途中まで履いて、あっこれ違った!ってなったわ〜!」
おまわりさん、この人です!!
そりゃ28?29?センチの夫が履いたら、ゴムも伸びるわね。
何かいい見分け方ないかな〜!